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最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)1283号 判決 1965年5月28日

主文

なし

理由

上告代理人岡林一美の上告理由第一点について。

原判決の引用する第一審判決の確定したところによれば、本件各手形の支払保証は、上告組合の代表者森達雄から組合のため右代表者名義で手形行為をする権限を与えられた同組合の常務理事青山正二が、右権限に基づいて、右代表者の記名捺印を代行してなしたものであるところ、本件手形のうち(二)ないし(五)の手形の森達雄名下の捺印は森達雄が上告組合の代表者となつてから使用している印章ではなくて、死亡した前組合長当時使用していた印章を用いて押捺したものであるというのである。しかし、記名捺印による手形行為の場合にその印章は記名者の印章として押捺されれば足り、その日常所用のものであることを必要としないというべきであり、このことは権限を有する者が記名捺印を代行する場合にも同様に解することができる。原判決がこれと同趣旨に出て、青山正二が前組合長当時使用していた代表者印を用いてした前記捺印を有効と判断したのは正当である。手形法七五条、八二条の解釈の誤り、審理不尽、理由不備の違法をいう所論は、右と異なる見解に立つて原判決を論難するものであつて、採用できない。

同第二点について。

所論は、本件(三)(四)(五)の手形については支払拒絶証書が作成されていず、(四)(五)の手形については支払のための呈示もなされていないから、被上告会社は手形法五三条によりその権利を失うと主張する。

しかし、約束手形の振出人のため保証をした者は振出人と同一の責任を負うものであるところ(手形法七七条三項、三二条一項)、振出人は、手形上の権利が時効によつて消滅するまでは無条件に支払義務を負うものであり、振出人は遡求義務者ではないから、所持人において遡求義務者に対する遡求手続をしなかつたからといつて、振出人に対する権利を失うものではない。このことは、為替手形に関する手形法五三条一項但書の規定からも明らかである。そして、叙上の理は保証人が振出人と同一の責任を負うことからして、所持人の保証人に対する権利についても同様に解するのを相当とする。所論はこれと異なる見解に基づき原判決の違法をいうものであり、採用できない。

〔関係金融機関〕徳島県信用組合(上告人)

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